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大塚観音堂

「鈍行列車、出発進行!」と幼稚なセリフを心の中で呟く。
午前9時の10分前、私はDSに跨りポタリングに出発した。
もう肌寒いと言っても良い気温になっている。今までは日焼け止めに使っていたインナーが防寒の意味をもつ。いつもよりもスローペースで北上する。途中いつものコンビニでお茶をボトルに詰め替える。そうか、今日は日曜日なのだ。通勤の慌ただしい雰囲気なく、ゆったりとした時間が流れていく。

JR山陽線の西広島駅を過ぎると右手に太田川が見え緑が多くなってくる。自転車に乗った二人連れの少女が横断歩道の向こうで待つ友に大きく手を振っている。若い彼女達がこれからどんな日曜日を過ごすのか中年男には想像が出来ない。

しばらくすると安佐南区大町という地区に入る。そこら辺りで出発から一時間。あまり疲労感はないがコンビニがあったので一度立ち止まり、カフェラテを注文し、DSの傍で立ったまま飲む。セブンイレブンでドリップコーヒーが100円で飲めるようになってどのくらいが経つのだろうか?カフェラテに関して言えば私はローソンのそれのほうが好みだ。だから最近よく飲む。一息ついてさらに先へとペダルを回す。以前立ち寄った長楽寺の傍を走り、安佐南区大塚地区へと到着した。

昨晩、文庫地図を見て行くことを決めた大塚観音堂を探す。話はそれるが、この辺りには黄金に輝き、頭を垂れる稲穂を蓄えた田が広がっている。私はこの風景がとても好きだ。弥生時代に稲作の文化が大陸からやってきて以来、脈々と連なる日本人が目にしてきた風景である。もはやDNAと言っても良い。田には水が必要で近くを流れる川から引水する。豊かな水、そして手間暇かけて育った稲、青い空(今日は曇っていたが・・・)そんな中を自転車で走る快感というか安堵感はなんとも言えず良いものである。


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そのお堂は少し小高い丘にあった。
最初に梵鐘が目に入ったが、そのお堂が目的地の観音堂か境内に入っても確信が持てないでいた。するとお堂の傍で一人の老女が枯葉の整理をされていた。後ろ向きのその老女に私はおもむろに声をかけた。

「このお堂は大塚観音堂ですか?」

少し驚いた様子の老女は振り返り、

「そうですよ。ようこそお参りくださいました。ここの世話をしている方は留守ですが、どうぞごゆっくりお参り下さい。」

とても柔和な笑顔で迎えてくださった。

私は拝殿へと続く小さな階段を登り、その前まで行き、ヘルメットとグローブを外し静かに手を合わせた。

このお堂に祀られているのは木造十一面千手観音立像で広島市の指定重要有形文化財となっている。少し長くなるが説明文を引用しておこう。

頭部と体部の主要部を一材から彫り出した一本造の技法が用いられており、さらに乾燥によるひび割れを防ぐ為、背中と下半身から内部がえぐられていて、胎内には鋳造阿弥陀如来立像が納められている。これらのことから、製作年代は平安時代後期、少なくとも鎌倉時代初期のものであろう。この像は南北朝時代、この地を領有していた大塚氏と関係のある仏像と伝えられている。いづれにしても、この小堂に納められている仏像は、何百年もの間、多くの人々の強い信仰心に支えられて守られてきたものであり、この地域に根付いた文化を発展させる上で大切な役割を果たしてきたと思われる。

千手観音の正式名称は千手千眼観自在菩薩である。千は数ではなく無限という意味で、広大無比な救済の能力を表している。信仰が定着したのは平安時代以降で、あらゆる願いを叶えてくださるが、特に病気平癒や延命、減罪の功徳で人気となったそうだ。

私事ではあるが、ここ一週間くらい歯痛に悩まされている。初対面で大変厚かましが、そのことも含めてお参りさせて頂いたのだった。

枯葉の整理に集中しておられた老女を、申し訳ないがもう一度振り向かせて、お礼を述べてお堂をあとにした。



もう刈り取りが始まっている田もある中を私は心地よい気分で風となったのである・・・・


Dst・・・35.43   Av・・・15.2   TREK・8・5DS







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