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カレーライス最終話

 ノズルが仕事を終えて帰ってくるのは夜遅い。仕事のシフトは20時か21時あがりで、そこから夕食を食べ始めるので以前はかなり脂肪がつき体重過多だった。数年前からダイエットを始め、85キロあった体重は72キロまで落ちた。いつも帰宅する前に立ち寄るコンビニエンスストアで炭水化物を抜いたおかずを数点買い、質素に食べるのが常だった。
 だからカレーを自炊するのは休日になる。今日もポタリングを終えたノズルが台所に立って野菜を切り始めた。その時である。携帯電話のアラームが心臓を射抜くように鳴った。緊急地震速報だ。鳴り終わるか終わらないかという瞬間に足元がグラグラと揺れ始めた。ノズルは即座に包丁を離し、食卓に手を突き倒れないように姿勢を屈めた。揺れは20秒ほど続き、決して小さなものではなかった。「ゴツンッ!」 床にしゃがみ込んだノズルの頭に食器棚の中から何かが落ち当たった。痛みを感じながら揺れが収まるのを待った。我に返ったノズルが頭に当たった空き瓶を見た。瓶には母親の字でラベルが貼ってあった。
 「カレー用」と・・・
 
 「そうか! コーヒーだったのか!」 ふとテレビの上の遺影を見ると、母が優しく微笑んでいた・・・
 ノズルの目には涙が溢れていた。瓶が当たった痛みだけではなかった。

 その夜、私の住処にヒラヒラと固形の餌が舞い降り、部屋は闇に包まれ、静かにポケットラジオの音が流れていた・・・

                          ~ 完 ~

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